大阪商業大学校友会平成27年度 寄附講座報告

 平成27年度 第18回 大阪商業大学公開講座「地域社会と中小企業」

 

 

第1回 4月16日(木)

 講義タイトル:「中小企業のM&A」

 講師:石原 孝行氏(昭和48年卒業)

     有限会社オフィス ユウ 代表取締役社長

 

〔講義内容〕

石原様は昭和48年に大阪商業大学をご卒業後、大手清涼飲料水メーカーに就職されました。名古屋営業所在籍時に上司の誘いを受け別会社の設立に参加されましたが、その後上司との意見の対立により、1984年に独立し石原商店を、のち1988年に株式会社名古屋フーヅを設立され、2000年には年商20億円を超える企業となりました。

2003年、事業継承がうまくいかないなどの事があり、会社設立時の発起人でもあった企業からM&A(企業の合併や買収)を持ちかけられ、株主総会で持ち株を譲渡し社長交替が成立したものの、M&Aに際しての条件を文書にしていなかったために約束を反故にされ、会社を奪われることとなってしまいました。

しかしそこから、もう一度やり直そうと後押ししてくれる奥様の支えもあり、サラリーマン時代にノートに書き残した営業での失敗経験を財産として、新たに有限会社オフィス ユウを設立し自動販売機設置の営業開拓という業界への再挑戦を始められ、現在も業績を上げておられます。

聴講している学生達に向けて、脱サラして起業するならば、自分で苦労してお金を貯めてその大切さを実感すること、失敗を恐れず経験を積んで技術を磨くこと、時代背景や自身の年齢などをよく考慮すること、などのアドバイスをされました。

谷岡一郎学長が常々口にされる「失敗をしていない人はチャレンジをしていない人だ」という言葉と同じように、失敗を恐れず経験を積み残した記録を財産として色々なことに挑戦して欲しい、というメッセージが受講している皆さんに届いたのではないかと思います。

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第2回 4月23日(木)

 講義タイトル:「今求められる人材像

          -紙業界を取り巻く現状から求められる人材像-」

 講師:春田 丈夫氏(平成9年卒業)

     株式会社シオザワ 管理本部 総務・システム管理室長

 

〔講義内容〕

春田様の勤めておられる株式会社シオザワは、紙卸業をメインに創業78年の社歴を誇っておられます。主なお客様である印刷業界では1991年の8.9兆円をピークに市場は年々減少し、2020年には4.6兆円になると予想されています。特にリーマンショック以降は経費節減等の影響で印刷物はますます減少の一途をたどることになりました。

それに替わって電子書籍や電子カタログなどの電子化の需要は増加し、印刷は紙からスマートフォン・タブレットなどに移行し時代は変化し始めたのです。

現代においては4つの潮流(①国際化、②高度情報化、③少子高齢化、④成熟化)の影響を受け、3つの変化(①主役、②競争相手、③速度)が目に見えて変化し、これからの時代に対応するにはただ漫然と物を売るだけではなく、顧客の要求を取り入れ、その要望に企業として取り組み、期待に応えていかなくてはならないのだとお話されました。

そこで、今までのように紙をそのものを売るという事業に加え、紙加工やオリジナルスケッチブック、ニーズの高いフォトブック対応用紙の開発など、紙を企画・制作して販売する事業や、機密文書をトイレットペーパーなどにリサイクルするという事業も手がけられ、紙に関する付加価値をつけて世の中の課題を解決してゆくという紙卸業の枠を超えたイノベーションを行われたそうです。

また、会社の成長のために経営理念や会社内の風土の改革・改善を行い、社員の人間性や専門知識に加え、創造力のある人材を育成するために、社内でクラブ活動やボランティア活動を行うなどの様々な取り組みをされているそうです。

最後に、人事を担当し面接もされているということで、就職活動をする学生達に向けて、学生時代に何をしたかということだけでなく、そこで起きたトラブルや困難にどのように対応し解決したかということが採用のポイントとなることなど、非常に重要なお話をして下さいました。

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第3回 5月 7日(木)

 講義タイトル:「中小企業経営者と信用組合」

 講師:安原 秀治氏(昭和50年卒業)

     両備信用組合 理事長

 

〔講義内容〕

安原様は大商大のご卒業生であり、在学時はカヌー部に所属していたとのことです。日々練習する中で、とある大会で2位になり「努力すれば成功することができる」ことを実感し、それがその後の人生において非常に貴重な成功体験となったそうです。

次に安原様が理事長を務めておられる両備信用組合についてお話しされました。広島県府中市に本店がある両備信用組合は、経営規模が全国154の信用組合の中で42位、自己資本比率も国内基準4%を大きく上回る11%と優良な経営をされており、「地域の中小企業等の繁栄・発展に向けた円滑な融資」を果たすべき使命として地域に根付いた金融機関を目指しておられるそうです。

そして、中小企業とはどのようなものであるかということについて、従業員数や資本金による区分などの資料を基にお話しされ、ドラッカーの言葉を引用し経営者が成果を挙げる8つの習慣や経営者にとって重要な資質である「真摯さ」についてもお話しされました。

お仕事柄、様々な中小企業経営者が経営環境の変化に対し、如何に対応されてきたかをお話しされました。例えば府中市には家具メーカーが多く存在しますが、生活様式の変化から大型家具の需要が減少したことへの対応として、これまで培った家具製造の高い技術を活かし、現代の生活様式に合わせた様々な家具やマンション備え付け家具、病院や学校の内装の木製部分製作、ヨットのキャビン製作など、今までとは異なる商品や分野を手掛けることで変化に対応されていると説明されました。

信用組合は一定の地域内の組合員が顧客となることから、地元の中小企業の発展が重要と考え、理事長就任後は中小企業への融資こそが事業成果であるという意識を強く持ち、地域発展のために行員一丸となって努めておられるとのことでした。

就職する学生達に向けては「自分のやりたいことは何か」を考え、それができるのは大企業なのか中小企業なのかをよく見極め、自分の強みを生かせる職業を選択することが大切だとアドバイスされていました。

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