平成22年度 寄附講座報告

平成22年度 大阪商業大学校友会寄附講座
 
~ 平成22年度 第13回大阪商業大学公開講座「地域社会と中小企業」 ~
 
 
第2回 5月6日(木)
 
講義タイトル:「企業再生~マーケティングとベンチャースピリッツ~」
講師:吉川 勝也氏(昭和50年卒業)
     株式会社 サン浦島 代表取締役社長
 
 
〔講義内容〕

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 始めに大阪商業大学在学中のエピソードや恩師の先生について語られた後、卒業後、家業の「ホテル浦島」に入社され、同ホテルの新館増築を皮切りに、「ホテル サン浦島」への名称変更、昭和63年の鳥羽の宿泊施設で初の温泉掘削(平成元年第1号の天然温泉涌出、「本浦温泉」と命名される)と、強い意志と夢を持ち、次々に新規事業にチャレンジされたお話が述べられました。
 平成2年からは「あかりを灯す運動」として、鳥羽市内で数々の廃業旅館の再生を図り、地域雇用の創出にも努めておられるということです。
 また、吉川氏が掘削された本浦温泉涌出以降、20年余りで鳥羽市内では温泉宿が60軒以上に増え、それに比例し観光客も増加した結果、多大な経済効果が地域へもたらされ、鳥羽市は平成20年より入湯税を財源とした観光基本計画を始動させたことが報告されました。吉川氏のチャレンジが地域再生へ大きな役割を果たしたのです。
 次に、「ベンチャービジネスは決して冒険であってはならない」との理念から、マーケティングの変化や多様化するニーズに対応できるよう、性格の違うものをあえて作ることや、事業所業務の集約化、事業所戦略の独立化を図ることによる運営リスクの回避、「ヒット&ペイ」(成功報酬型)の採用による温泉掘削における「一か八か」という最大のリスクの回避、銀行との信頼関係構築や資本回転率の厳守による資金面でのリスク回避など、チャレンジを単なる冒険で終わらせないため、「未来に続く宿」として発展していくためのリスクヘッジについて具体的に説明されました。
 近年では福祉観光の確立を目指し、伊勢鳥羽志摩交流フロントコンソーシアムを設立し、代表団体の代表に就任され、人工透析者も安心して安全に旅行が楽しめるトータルバリアフリー観光地化プロジェクトを発足させたことが述べられました。また、平成20年開業の「御宿The Earth」を次世代旅館創りのラボと位置付け、地球環境を守るためCo₂排出・海への排水・ゴミの排出「0」の「ゼロエミッション」に取り組まれ、さらなるチャレンジを続けておられることが報告されました。
 講義の終わりに、ビジネスにおいては「他とは違うけれども、違いすぎないことが大事である」というポイントを話され、最後に学生たちに向けて語りかけられた「チャレンジ精神を持って様々なことに挑戦して欲しい」と言う言葉は、常にチャレンジし続けて来られた吉川氏だからこその重みと力強さが感じられました。
 
 
 
第3回 5月13日(木)
 
講義タイトル:「行動が人や地域を元気にする、企業にできる活動とは」
講師:太田 嘉樹氏(平成8年卒業)
         株式会社 宝池自動車教習所 代表取締役
 
〔講義内容〕

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 まず始めにご自身の略歴をお話された後、7つのテーマに沿って講義を進められました。
 1つめは「宝池自動車教習所の歩み」と題し、まず地名は「宝ヶ池」だけれども会社名は「宝池」である理由について説明されました。それは「ヶ」がある→「怪我ある」ようだとある方に言われたことがきっかけで、安全な教習所にするために「ヶ」を取り「宝池」にされたのだそうです。
 このような具体例を挙げられた上で、「覚えたことは忘れる、しかし理解したことは忘れない」というキーワードを述べられました。
 また、昭和36年の株式会社宝池自動車教習所創立から、現在に到るまでの歴史をお話しになりました。
 2つめは「大商大から学んだもの」というテーマで、学生時代に所属しておられたゴルフ部で学んだ「修練」、大商大・御厨寮で学んだ「友情」、在学時に発生した阪神大震災への応援活動で学んだ「奉仕」の3つについてお話しされました。
 3つめのテーマは「大商大を誇りに思うこと」で、学生時代のアルバイト先でお客様に言われた一言から、「自分への評価が大商大の評価になる」ことに気付かれたエピソードを語られ、そこから「人から認められる行動をすること、適切な発言をすること、人としての品格を持つこと」が重要であり、「私の大学は大商大です」と誇れる行動をすることが自分の自信につながる大切なことなのだ、と学生達に訴えかけておられました。
 4つめは「企業が魅力を感じる人材とは」ということで、就職活動を行っている学生に向けて大事なアドバイスをされました。特に、面接において質問されることの多い「大学で何をしてきたか」という問いに対し、とってつけた話しではなく本当の話を持っていることが大切で、そのためには学生生活において「今日一日を一生懸命に生き、感じたことを人に伝えること」を常に行うことが必要なのだと説かれました。
 そして、「当たり前のことを当たり前にやり続けること」「いつも笑顔で元気に行動すること」「人がやらなければならないことを確実に行い、かつ人がやらないことをやること」という3つのことが社会人としての基本行動であり、これらを意識して行動することにより理想的な社会人として認められると説明されました。
 5つめは「皆さんに意識して欲しいこと」として、「素晴らしい言葉に出会うこと」「本を読むこと」「感謝すること」の3つを挙げられ、これらを意識しながら日々を過ごすことで企業・地域・行動力の原点である「人間力」が育つのだということを説明されました。
 6つめは「大商大が『大学』というフィールドで学生にしなければならないこと」と題し、自動車教習所の経営者として培われた経験から、大学がなすべき「ファンを作ること」「コーチングの重要性」「相手目線で考える」の3点を大商大卒業生として提言されました。
 最後に「企業にできる活動とは」というテーマで、宝池自動車教習所が行っている「交通安全活動」「地域の美化活動」「京都五山の送り火のコース開放」「地域での備品購入」が紹介され、地域と企業が良好な関係を築くことによって、お互いが元気になり活性化されていくことになると述べ、講義を締めくくられました。
 様々なキーワードをわかりやすく解説され、学生達に語りかけるその姿には、先輩としての暖かさと共に、若さ溢れる熱意が漲っているようでした。
 
 
 
第4回 5月20日(木)
 
講義タイトル:「知っていますか?中小企業組合」
講師:伊藤 良夫氏(昭和50年卒業)
    三重県中小企業団体中央会 事務局長
 
〔講義内容〕

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 まず始めに自己紹介をされ、大商大在学中に経験されたいくつかの印象的な出来事について、学生運動が盛んであったことや、オイルショックの影響で就職難であったこと、試験の時には友人の論文作成をよく手助けしたことなどの思い出を語って下さいました。
 そして本題に入られ、最初に中小企業の現状を認識するため、全国の中小企業数の推移について、配布資料「中小企業組合ガイドブック」の表を基に報告されました。
 それによると、平成10年と平成20年の事業所数の増減比率は35%減少しているとのことです。考えられる原因として①需要の停滞②販売価格の低下③大手企業等の進出④ニーズの変化⑤施設・機械の老朽化の5つが挙げられ、中小企業は社会への適合性が見出せずに廃業してしまうケースが多いことが説明されました。
 そして事業所数減少の解決に向けて、規制緩和と規制強化のバランスを取ること、中小企業の質的魅力や経営に対する魅力を向上させる対策を取ることを中小企業団体中央会として提言していることが述べられました。また、地域雇用の軸である中小企業の活性化が、地域や経済の活性化において重要なポイントであるということが説明されました。
 次に「中小企業組合」とは何かを知るために、その歴史や精神の説明がありました。
 そもそもはロバート・オーエン(1771-1858)の思想”事業家か資本家へ、資本家から社会運動家へ、そして社会運動家から組合組織家へ”という、「友愛」と「相互扶助」の精神・原理に始まり、1844年にロッジデール開拓者組合が組織されて後世の協同組合原則の基となる9原則を結実させました。そして現在では、①相互扶助②加入脱退自由③議決権の平等④配当制限⑤直接奉仕の原則⑥政治的中立の6項目が中小企業組合の基準及び原則であるということです。