平成24年度 寄附講座報告

平成24年度 大阪商業大学校友会寄附講座
~ 平成24年度 第15回 大阪商業大学公開講座「地域社会と中小企業」 ~
第1回 4月19日(木)
講義タイトル:「地場産業と私の会社」
講師:安田 光孝氏(昭和40年卒業)
万定織物株式会社 代表取締役社長
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〔講義内容〕
 「地場産業と私の会社」と題された講義では、丹後地方で290年に渡って織り続けられてきた丹後ちりめんの生産方法や種類、歴史、今後の展望などについてお話しされました。
 大阪商業大学に入学されたきっかけとなったのは、進学について相談した地元の神社の宮司さんに「商いの街大阪で商売を学ぶなら、大阪商業大学に行きなさい」という言葉だったそうです。高校では家業を継ぐために紡織の勉強をされていたそうですが、大学進学のために普通科の勉強もするという努力をされました。
 在学中は経済研究会に所属し、副部長も務められました。また簿記の資格を取得するた
めに、授業以外にも勉強に励まれたそうです。
 そして続いて地場産業である丹後ちりめんについて、ちりめんができるまでの工程や、様々なちりめんの種類について解説されました。
 また着物だけでなく、ファッション小物への利用や、ちりめんを作る際に絹から抽出されるタンパク質セリシンを化粧品に利用したりなど、新たなちりめんの利用方法についてもお話されました。
 290年という長い歴史の中では、丹後地方の大地震や戦争、また昭和40年代の黄金期からオイルショックを経て苦しい時代を迎えたりと様々な困難があったそうですが、ちりめんの職人さんはもちろん、地元の方々が丹後ちりめんという地場産業があってこそ日々の生活が営めるのだという思いを強く持ち、丹後ちりめんを支えているとのことでした。
 近年では最古のちりめんを復元させるなど、蚕の里をアピールしたり、天橋立という観光地も併せて丹後を活性化させる活動も行っておられるそうです。
 地域に密着した産業があり、それを地域の人々が支えて長い歴史が作られる、という理想的な形である丹後ちりめん産業のお話しは、講義タイトルである「地域社会と中小企業」に非常ににふさわしいものであったと思います。
            
 
 
 
第2回 4月26日(木)
講義タイトル:「沖縄観光と人財育成」
講師:当山 勝正氏(昭和54年卒業)
株式会社ホット沖縄 常務取締役
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〔講義内容〕
 ご講義には沖縄ならではのかりゆしウェアでご登壇され、まずは商大在学中に学んだことについて語られました。
 商大に入学したのは、沖縄県から選ばれてバスケットボール部に入部するためだったそうです。寮生活を送りクラブ活動を行う中で、我慢する事や当たり前のことを当たり前にやることの大切さを学ばれ、社会に出てからもそのことがとても役立っているとのことでした。
 そして次に、演題である沖縄観光のお話しに入られました。
 観光とはお国自慢である、ということで、万座ビーチホテルがリゾート地として沖縄を売り出したのを皮切りに、次々とリゾートホテルができ、沖縄は一躍観光立県となったのだそうです。ここで沖縄で一番人気がある民謡「てぃんさぐぬ花」を一節歌われる場面もありました。
 現在の沖縄の観光業界が力を入れているのは、野球などのキャンプ地としての①スポーツツーリズム、人間ドックとリフレッシュを兼ねた②医療ツーリズム、沖縄ならではの③リゾートウェディング等だということです。また、コンサートなどの④エンターテインメントツーリズムの実現に向けて複合施設を作る動きもあるようです。又⑤アジアからの集客力を上げる為に空港の滑走路を増やすという、ハード面のインフラ整備にも力を入れているとのことでした。
 そんな中、当山様の勤めておられるカヌチャベイホテルでは、地元の施設やお店を巡るバスツアーなど、沖縄ならではの素材を取り入れ、地域と密着した事業に力を注いでおられるそうです。
 そしてソフト面で一番大事な、人財育成について話されました。就職活動中の学生達にはとても参考になることで、「じんざい」と読む四つの「人財」「人材」「人在」「人罪」を挙げ、企業が求めるのは実現力を持ち気配りの出来る人である「人財」だと説かれました。
 そして学生に向けて、実際に面接等を行っておられる立場から、仕事はやりたいこと・好きなことを第一に選ぶこと、就活とは自分の売り込みであるのだから積極的に活動しなければならないことや、メンタルトレーニング法、履歴書の具体的な書き方などをアドバイスされました。
 「なぜ仕事をするのか?」という問いに「幸せになるため」と答えられ、地域と強く結び付きながら観光立県沖縄で生き生きと働いておられる姿に、学生達もきっと働くことへの希望を持ったはずだと思います。
            
 
 
 
第3回 5月10日(木)
講義タイトル:「地域社会と社会福祉の向上~新しい児童福祉を目指して~」
講師:今西 博嗣氏(昭和47年卒業)
    社会福祉法人専心会 くすのき保育園 くすのきめぐみ保育園 理事長

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〔講義内容〕
 まず初めには、ご自身の生い立ちについて語られました。幼い頃にお父様を亡くされ、農業を営んでおられたお母様とお祖母様と共に暮らしておられたそうです。
 お母様からは強く大学進学を勧められたものの、家計のことなどを考え、高校卒業後、一旦は銀行に就職されたとのことでした。
 ですが、日々の勤務の中で、やはり大学を卒業しておいた方が良いとお考えになり、銀行を退職され商大に入学されました。
 商大入学にあたり、ご自身の育った環境を振り返り「日中に親が働きに出ていても子供が安心して暮らせる社会を作る手助けがしたい」と保育園の設立を思い立たれ、在学中は教職課程を学んだり、市役所などに通って保育園を作るには何が必要か職員の方にお話を聞いて資料を集めるなどの準備をされていたそうです。
 そして学生達には、在学中に、たとえ半歩でも良いから自分の未来に向かって進む努力をして欲しいと話されました。また、未来への希望を口に出して伝えることで、周囲の協力や助言を得られるので、消極的にならずに強い意志を持って欲しい、とも述べられました。
 続いて、今西様が理事長を務めておられるくすのき保育園、くすのきめぐみ保育園での活動を映像で紹介されました。「地域で生まれた子供は地域で育つべき」との考えから、医療介護が必要な子供さんも分け隔てなく園に受け入れたエピソードや、「必要な人へ必要なサービスを」との思いで、延長保育・育児相談等の子育て支援・一時保育などの事業を先駆的に始められたこともお話しされました。
 園では絵本の読み聞かせや童謡を歌うこと、和太鼓の演奏にも取り組んでおられることを映像を交えて話され、「9歳までにその子の基礎的な部分が育つ」と言われることから、乳幼児期に形成される情緒・情感を育てることの重要性を説かれました。
 子供の出生数が減り、社会や家庭環境も変化する中で、地域社会を構成する最も大切な要素である子供達とその家族に深く親身になって関わっておられる姿は、「世に役立つ人物の養成」という大学の理念を受け継いでおられるのだと思いました。
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