平成23年度 寄附講座報告

 
平成23年度 大阪商業大学校友会寄附講座
 
~ 平成23年度 第14回 大阪商業大学公開講座「地域社会と中小企業」 ~
 
 
 
 
第2回 4月28日(木)
 
講義タイトル:「地場産業と市場開拓」
講師:長谷川 忠博氏(昭和44年卒業)
     藤原産業株式会社 専務取締役
 
 
2011clip_image002.jpg
〔講義内容〕
 今回のご講義では、5つのテーマに沿ってお話を進められました。
1.大学時代のこと
 ご卒業された昭和44年当時の大商大の写真をご紹介され、「明確な高い目標を持てば人は必ず努力する」ということを教わり不撓不屈の精神を養った水泳部時代のお話をされました。また商大節をご披露され、学生や聴講生の皆様の手拍子も加わり会場は大きく沸きました。そしてご卒業後に地元の兵庫県に帰られ、藤原産業株式会社に入社されたのでした。
2.三木市について
 藤原産業株式会社のある三木市は、大工道具の産地・金物の町として有名であり、それについてVTRを使ってのご紹介がありました。
3.藤原産業株式会社について
 明治30年創業、114年目を迎える藤原産業株式会社は、日本かみそりの製造から始まり、現在では「生活に役立つ商品をより多くの人に」をモットーとしてDIY製品を多く販売されているとのことです。
4.変化への対応が変革になる
 三木市内の金物関係出荷額や、日本のDIY産業/ホームセンター年間総売上高の推移についてグラフで提示され、のみ・かんな等の売上が下降する中、旧来の大工道具だけではなく、いち早くDIY産業に参入し、道具の電動化や建築基準法等の変化に対応してきたことによって企業として成長されてきたことをご説明されました。また、ビジネスの形態も家業から企業へ、梱りからバラ売りへ、経験・勘から科学へと変化する中、柔軟に対応してきたことが現在の藤原産業株式会社の発展に繋がっているとお話されました。
5.成長から学んだこと
 時流に対応したこと、販売網を全国に広げたこと、道具・工具に特化して開発を行い、成熟した商品を市場に導入して新しい需要を創造したこと等、藤原産業株式会社が成長した様々な要因について分析されました。そして、そこで終わるのではなく、そこから学び次に繋げて行こうとされる姿勢こそ、講義の始めにお話された「不撓不屈の精神」の表れであると感じられました。また、その精神が培われたのが大商大であるということが、校友会としてたいへん誇らしく思えました。
 
 
 
 
第3回 5月12日(木)
 
講義タイトル:「地域一番店への挑戦・そしてing…」
講師:中村 泰三氏(昭和56年卒業)
     株式會社なかむら 代表取締役
 
 
2011clip_image003.jpg〔講義内容〕
 まず始めに東日本大震災で被災された方へのお見舞いを述べられた後、校友会髙岸会長から「講義を『したい人』と『して欲 しい人』とは違う。あなたにぜひ講義をして欲しい。」という言葉がこの講義を引き受けられた理由であると話されました。
 講義の冒頭では、米穀店を営んでおられたお父様からの「商売の地で商業を学んで来なさい」というお言葉で商大進学を決め、在学中は剣道部に在籍し先輩のお世話などで学んだことが社会に出てからとても役に立っている、と学生時代を振り返っておられました。
 卒業後、家業のなかむら米穀店に就職されましたが、周囲から「大学に行ったのにどうして米屋になるのか」など言われ、米穀店の地位の低さにショックを受けられたそうです。しかし、それが逆に発奮材料となり「一番の米屋になってみせる」という明確な目標を持つことができたということでした。
 就職された当時は一般家庭向けの小売を主としておられたそうですが、高校時代のご友人の紹介をきっかけに、販売先を業務用店に的を絞り一極集中することを決意され、業績を伸ばして行かれました。
 農家の就業数や国民一人当たりの米消費量が減少する中、食糧管理法が変わり米穀販売業者数は増加したことを表すデータを示され、厳しさを増す小売業界についてご説明されました。また、年々クレーム問題も増加しているそうですが、「米屋の評価はご飯の評価である」という理念のもとに、お米アドバイザーなどのお米に関する資格を次々と取得され、顧客の元に足を運び炊飯技術のアドバイスを行うなどの専門性を打ち出され、目標であった県内トップの売り上げを誇るお店になられたということです。
 しかし、近年の不景気による取引先の廃業で業績は悪化。ただそこで、売り上げが上がることによって「売上№1」にだけこだわってしまっていたことに気付かれたそうです。それからは「№1のお店とはお客様にとってオンリーワンのお店であること」をモットーに、小学生への食育教育、地元メディアへの米飯情報の提供など、地域食文化の向上に力を入れておられることが紹介されました。
 そして最後に学生達に向けて、卒業後は大企業への就職や公務員になるだけでなく、中小の企業で自分の興味あることに取り組みトップになる挑戦をする道もあるのだと語られました。ご紹介された「鶏頭になるも牛尻になるな」という言葉は、就職について悩んでいる学生たちの胸にきっと響いたことと思います。
 
 
 
 
第4回 5月19日(木)
 
講義タイトル:「日本の中小企業の成長戦略と大学生の就活の正しい選択」
講師:小川 正夫氏(昭和38年卒業)
     光昭ホールディングス株式会社 代表取締役会長
 
 
image001.jpg〔講義内容〕
 まず始めに自己紹介をされ、商大在学中は教職員と学生間での草野球が盛んで、谷岡太郎前学長ともしばしば対戦されたという思い出や、ESS部に所属し関西の各大学が出場して行われる英語劇の大会で常に優勝していたというエピソードを語られました。在学時から前学長とはご懇意にされ、そのご縁で以前は谷岡学園の理事を勤められ、現在は評議委員をされているということです。
 講義の最初にお話しされたのが、平成23年3月11日に発生した東日本大震災についてでした。ご自身も千葉県にお住まいで、液状化現象によって水道が使えなくなるなどの被害を受けられ、5月にご出身地近くの茨木市に越して来られたそうです。またこの大震災によって、各種製造業への部品供給の低下や消費者の精神面での自粛による消費の低下、原発事故での放射能汚染による風評被害などが引き起こされ、日本経済は大きな打撃を受けていることが説明されました。
 景気の落ち込みが懸念される中、中小の企業は高い技術力を持っていても、営業力やデザイン力不足によりビジネスに繋がらずに経営が苦しくなることが多いため、これからは企業団地内での様々な業種の相互協力が必要不可欠であろうと述べられました。また、関東での電力不足により電気代が上がり、各企業の不採算が予想され、生産拠点等の海外流出が起こる恐れがあるとのことで、そこから引き起こされる経済悪化を止めるためにも、西日本、特に関西が活性化する必要があると説かれました。
 関西の経済活性化策の1つとして紹介されたのが、IR=統合リゾート計画でした。シンガポールでのIRによる経済効果を示すDVDが紹介され、大阪にIRを誘致することによって雇用が創出され、経済の活性化が期待できると説明されました。
 最後に学生たちに向けてお話しされたのが、就職活動についてでした。親の希望などで安定した大企業を志向する学生が多いが、現在は大企業も海外の方を雇用する率が高いこともあり、なかなか内定を取れず、中小企業に目を向けた時には既に求人がなくなり、フリーターやニートになってしまうというパターンが多いそうです。そうならないためにも、自分のやりたいことをしっかりと見極め、中堅企業や中小企業に目を向け、ベンチャースピリットを持って努力できるような職場を探すことが大切だと話されました。
 「経営者になる夢を持て」というお言葉は、実現された方から発せられたものだからこそ、学生達への大きな励ましになったことと思います。