平成25年度 寄附講座報告

平成25年度 大阪商業大学校友会 寄附講座

 

 

平成25年度 第16回 大阪商業大学公開講座「地域社会と中小企業」

 

 

 

第1回 4月18日(木)

講義タイトル:「鯨の食文化と修験道について」

講師:乾 誠治氏(昭和39年卒業)

     料亭 西玉水 代表

 

〔講義内容〕

 現在、鯨料理店の老舗である料亭「西玉水」の四代目当主である乾様は、先代当主であるお父様から「若いうちは自分の好きなことをしなさい」と言われ、税理士の資格取得を目指して勉強していたそうです。しかしお父様が体調を崩されたため料亭を継ぐ決心をされ、10年間お父様に仕込んでもらい今の自分があるとお話しされました。

 また乾様は修験者でもあることから、修験道についても語られました。修験道とは山へ入って厳しい修行を行うことで悟りを得ようとするものですが、やはり修験者であったお父様の勧めで高校三年生の時に初めて大峰山に入られたそうです。慣れない山道に疲れていた時、同行のご老人から「この山を自分の人生だと思って歩いてごらん」と声をかけられ、自分のペースで進めば良いと気付き、またすれ違う人々が、見知らぬ同士であっても挨拶し声をかけあう姿に、素晴らしい山であると感じたとのことでした。以来54年間、毎年大峰山に登り行に励んでおられるそうです。

 そして、ご専門である鯨について話されました。

 鯨には様々な種類があり、シロナガスクジラやナガスクジラ、イワシクジラなどの大きな鯨であるヒゲクジラ類が食べておいしいのだそうです。また牛肉と比べて脂肪分は三分の一、タンパク質は四倍という低カロリー高タンパクの健康食だということです。

 大阪の人々は日本の中でも特に鯨を食べることを好み、明治には捕鯨が盛んであったことから、明治18年に初代がはりはり鍋を提供するお店「西玉水」を出されました。

 昭和には更に捕鯨が盛んになり、料亭料理や学校給食、動物の飼料にまで幅広く活用され、また鯨の歯は文楽人形のバネに使われるなど、すべてが大切に使われていたそうです。

 そうして鯨が多くの人に食され、お店も軌道に乗っていたところに、IWC(国際捕鯨委員会)において捕鯨取締条約が採択され、捕鯨が禁止となってしまいました。

 日本はIWCに加盟しているため商業捕鯨が行えず、鯨を仕入れることができなくなってしまいたいへんご苦労されたそうです。現在は、IWCの捕鯨禁止に異議申し立てをしており商業捕鯨ができるノルウェーなどから鯨を仕入れておられるとのことです。

 今では鯨は両極で10万頭ほどに増えて絶滅の惧れはなく、また一種のみを保護することでその数が増えすぎると却って海の生態系が崩れてしまうことになるため、捕鯨再開の可能性は大きいとのことでした。

 鯨の食文化を後世に残し日本の文化を守るためにも、若い世代にもっと鯨を食べることに興味を持って欲しいというメッセージで講義を終えられました。

 料亭の扱う食材が世界の経済や政治と大きく関わっているように、経済について学ぶことがあらゆる面において重要なのだと感じました。日本の伝統的な食文化である鯨が、政治的・経済的な思惑で絶えることのないように、今後も頑張っていただきたいと思います。

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第2回 4月25日(木)

講義タイトル:「明るい豊かな市域社会の実現を目指して!~社長・理事長・代表 三足のわらじを履く~」

講師:藤井 泰三氏(昭和62年卒業)

    株式会社藤井産業・株式会社藤井産業運輸 代表取締役社長

    社会福祉法人あおぞらこども福祉会 みかど保育園 理事長

   PKICジュニアゴルフアカデミー 代表

 

〔講義内容〕

 三つの肩書きを持つ藤井様ですが、その一つめの㈱藤井産業は、土木建設用骨材の原石採取から生コン用骨材・アスコン(アスファルトコンクリート)用骨材の製造販売、産業廃棄物の処理や建設発生土のリサイクル・土質改良工事などを主な業務とされていて、原石(砂利の元)や砂利プラント、リサイクルプラント、土壌改良製造から出荷までのフローチャートを図や写真で示され、詳しく解説されました。

 例えば原石を田んぼから採取する際は、地主の方から田んぼをお借りして1年目で原石を採取し、2年目に元通りに埋め直し、さらに畦の整備や水はけを良くするための工事等をして返却するそうです。また山土砂採取の場合は山林を買い取り、採取後には植林や宅地整備などをするため、10年以上の工期が必要なのだそうです。

 次にPKICジュニアゴルフアカデミーについてですが、藤井様は元々ハワイがお好きで且つゴルフがお好きなことから、よくハワイを訪れてゴルフをしておられたそうです。ある時ハワイのゴルフの先生から「子供達にゴルフを教えてはどうか」と言われ、最初はプロでない自分には無理だと断っておられましたが、藤井様のお子さん達が一緒に楽しそうにゴルフを学んでいる姿を見て、アカデミー開設を決心されたそうです。

 アカデミーでは、ゴルフを楽しみながら自ら学び自ら成長する「学育」の精神に基づき、心身ともに健全なジュニアを育成することを目標とし、ゴルフの練習だけでなく、雪でオフシ-ズンになる冬には市の体育館でのビームライフルで集中力を養ったり、クロスカントリーで足腰を鍛えたり、お寺で座禅を組み精神修養に励むなど、様々な取り組みを行っておられるとのことで、アカデミーの生徒は世界大会にも出場するなど、今後の活躍が期待されています。

 三つめのみかど保育園は、昭和27年8月に富山市立御門保育園として開園しましたが、平成22年4月1日に民営化するにあたり理事長に就任されました。子どもの健全な発達と思いやりや優しさを育むことを保育目標に掲げ、剣道教室やお茶の指導なども行っておられるそうです。また、大商大校友会富山県支部の新春会に講師としてバスケットボールbjリーグ富山グラウジーズの社長が来られたご縁で、チームの選手と園児達との交流会も実現し、地域社会との絆も深めておられるとのことでした。この富山グラウジーズには大商大出身の選手も在籍していて、チームの勝利に大きく貢献しているそうです。

 藤井様は高度経済成長期→バブル期→バブル崩壊という激動の時代に育ち、バブル崩壊後、会社とは経営とは何かという疑問を持たれたそうです。その時、藤井産業の社是である「明るい豊かな市域社会の実現を目指して!」という言葉を目にして、地域から利益を得るという考え方から、会社は地域があって初めて活かされるのであり地域住民や環境とより良い関係を築いて行かなければならないのだ、と視点を変えて考え始めたそうです。

 そこで、自分にできることの可能性を求め、ジュニアゴルフアカデミーを開設したり、保育園の民営化事業に着手するなど、地域社会への貢献のための活動を始められ、三足のわらじを履くに至ったとのことでした。

 企業として利益を追求するだけでなく、地域社会によって企業が活かされ地域に貢献することによってお互いが活性化されるという相乗効果を生み出す活動は、「地域社会と中小企業」というこの講義のテーマにふさわしいものと言えると思います。

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第3回 5月9日(木)

講義タイトル:「中小企業と地域社会との関係」

講師:小川 敬雄氏(昭和47年卒業)

    株式会菱高SDネットワーク 代表取締役

 

〔講義内容〕

 講義を始められるにあたり、まずは大学時代のことをお話しされました。

 商大に入学されたのは親御さんの薦めだということですが、在学されていた頃はちょうど学生運動の激しい時代で、大学封鎖などで授業も行われず、なかなか勉強ができなかったそうです。そこで部活動に熱中されたとのことで、在籍していたアイスホッケー部以外にも、夏にはワンダーフォーゲル部に参加したり、自動車部にも準部員として参加したり、さらには体育会本部の会計もされていたそうです。会計として様々な人と接し、売り手側・買い手側の気持ちを知ることができたことが、社会に出てからとても役に立つ経験となったとのことでした。

 ご卒業後は大手建築資材卸の企業に入社され、そこで資材注文の受け方などを一から教わり、また各メーカーが開催する勉強会などで豊富な知識を身に付けることができたそうです。

 それから営業職に移られ、各地方へ営業を回ることとなり、そこで地域社会との関係の重要性を学ばれたそうです。建築資材を扱う業界では、信頼関係がたいへん重要であり、地域社会に溶け込み信頼を得なければ売上に繋がらないため、こまめに得意先を回るなどして地域の方々との人脈を作り上げていかれたとのことでした。

 企業にお勤めの間には、セメント業界の組合作りに携わるなどご活躍されましたが、景気の悪化で部下をリストラしなければならなくなった際に「自分が辞めれば部下を辞めさせなくて済む」と会社を退職され、1999年7月に独立し会社を設立されました。

 独立後は、法人関係のお仕事を多く手がけられていたために、中東戦争や耐震偽装で騒動となり建築法の規制が厳しくなるきっかけとなった姉歯事件、設備投資を控える企業が増え資材の販売数が激減したリーマンショック、深刻な資材不足となった東日本大震災など様々なご苦労があったそうですが、そんな時に支えとなったのが地域の方々であり、地域社会での人脈により、お仕事を紹介してもらうなどたいへん助けられたとのことでした。

 その「人脈」を作るのは、「良い勉強」であり「良い遊び」であると語られ、建築業界においては大手ホームメーカのシェアは3割程度で、その多くは地域の工務店や大工さんによって担われており、地域の方々とのつながりが資材を扱う仕事においていかに大事なことかを説かれました。

 終わりに、聴講している学生達に向けて、人脈を大切にすること、そのためには決して相手を裏切らないことが大切であると話されました。また、就職や転職で悩みがあれば校友会支部の先輩方に気軽に相談して欲しい、そのつながりがきっと助けになるだろう、と語りかけられました。

 現在では建築資材の卸業から設計・施行、不動産に至るまでトータルに建築を扱われ、人が住む・働く場所を作り出されているお仕事だからこそ、地域社会とのつながりの重要性を強く実感されていることがわかる、たいへんためになる講義だったと思いました。

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